腰痛 2

大ざっぱに急性腰痛と慢性腰痛に分けて紹介します。

急性腰痛
 a.腰椎捻挫
 b.腰椎椎間板ヘルニア
 c.腰椎圧迫骨折
慢性腰痛
 a.椎間板変性症
 b.変形性脊椎症
 c.骨粗鬆症
 d.腰部脊柱管狭窄症
 e.腰椎分離症・すべり症

 おおよそ、上記のものがよく遭遇する腰痛です。もちろんこれ以外にも腫瘍やカリエス(結核性のもの)など様々です。
 次に、原因で分類すると下記の様になります。

Ⅰ.脊柱・体幹の異常(筋・靱帯の異常/脊椎の疾患)
Ⅱ.神経系の異常
Ⅲ.症候性の腰痛症(産婦人科疾患から/泌尿器科疾患から/消化器疾患から)
Ⅳ.精神科的疾患

 治療をする側としては、こういった分類で腰痛を考えていきます。個別の病名・疾患の詳細については割愛します。お知りになりたい場合は、ネット検索をお勧めします。2~3ヶ所の専門病院の解説を調べれば詳しく、あるいは分かりやすい説明が見つかります。鍼灸院的にはもうちょっと違うところを説明したいので。次回はそのあたりを書きます。

腰痛 1

「腰痛は人類の宿命ともいわれている。すなわち、2本足で歩行することによって重い大脳を支え、両手を自由にすることで文明を発達できた人類は、その代償を腰痛で払うことになった。4つ足では体重が脊柱全体に分散されるのに対して、2本足では下位腰椎部を中心に重心がかかるため、腰痛を起こしやすい。」
 (「疾患別治療大百科 シリーズ1 腰痛」より抜粋 )

 たいへん分かりやすい要点です。あらゆる腰痛の原因が表現されているともいえます。とはいえ勉強した人が納得できても、普通はチンプンカンプンでしょう。「膝痛」の投稿を読んだ方なら「膝だって相当に弱そう」と思うかもしれません。

 比較するなら、足は二本で体重を支えますが、腰は体幹一本で支えています。腰は腰より上を支えつつ、腰より下の運動による衝撃を受け止めています。膝は時々で片方が全体重を支えますが、左右交互に作用する一方で腰は常に一つです。また解剖学などを勉強した人ならわかると思いますが、実のところ腰は立っても座っても寝ていても、それなりに負担がかかりやすい構造になっています。

 ひとまず大事なポイントは膝と同様、腰痛も「筋肉疲労程度だからと放置しすぎると、かなりやっかいな故障に進行する」という一点です。

 次回はよくある腰痛の病名を紹介してみます。

異説奇経治療

 私が行っている奇経治療の紹介です。内容は臨床家向きです。一般の方には謎言語になると思いますのでご注意ください。

 従来の八脉と宮脇和登氏の提唱する新四脉を含む十二脉を扱う点においては同じつもりです。大きな相違点は、簡易診断に宮脇氏提唱の腹診とは違って「臍の周囲と腹直筋外縁」に反応を求める点です。この方法による特徴は

1.「左右どちらに配穴するか」が反応と一致することが多く、迷いにくい。

2.奇経治療は主穴と従穴の組み合わせが原則であるが、この反応点を主眼に配穴する場合、主穴のみで著効が得られる場合が判別できる。単純に主穴に鍼を置くだけで反応点の硬結が綺麗に消えるからです。

3.脉診や、通常の腹診で判断に自信がもてない場合にまずこの方法で奇経治療を行うと、脈も腹もがらっと表情を変えて分かりやすくなることが少なくない。小児針ではこれだけで治療が可能です。というか幼児に限らず主訴がわからない(愁訴が多すぎる)相手だと非常に助かる。

さて、肝腎の反応点ですが、

A.臍の周囲八方向(上下、左右、斜め)におよそ指頭(腹)一つ分の幅が反応点です。2つ分が並んでいます。つまり2指頭分が反応範囲です。臍の際から取ります。おそらく骨度法です。じっくりとは検証してません。

B.硬結反応の取り方は、押圧は圧力0とわずかに押さえ込むこと、さらにポイントの表皮の虚実で4パターンあります。一見ややこしそうですが、それ程難しくはありません。判別の基準は「圧0で実」とします。臍の際が主穴、その次が従穴です。なお、臍が開いている人と、閉じている人などいるが、あくまで「際から」であす。隙間をあけて反応を取ると、まったく奇経とは別物になる様です。つまり二指の腹をそろえて反応を伺うのが大事です。

C.臍の上が任脉、下が督脉、左右が陰維脉、上の斜め方向が陽維脉、下の斜め方向が手の少陰脉です。少し押さえ込んだところに反応が出ていれば上が陽蹻脉、以下順に陰蹻脉、衝脉、帯脉、足の厥陰脉です。手足の陽明脉は腹直筋外縁で判断します。臍の高さを境に「表皮が実で」上が張っていれば手陽明脉で、下が張っていれば足陽明脉です。まず2パターンを記述しましたが残りの2パターンは簡単です。表皮が虚を呈していれば主穴従穴の反応点が逆としてください。手足の陽明脈は軽按での反応(実・緊張)が基本で、軽按で平かつ重按で実で逆になり、明らかな虚でも逆になります。


 次に配穴で左右どちらを取るかの判別ですが、臍の左右どちらに反応が出ているかがそのまま示しています。正中線上だけは反応点を左右に動かし(皮膚をひっかける様にすべらせる)、どちらに強く硬結を捉えられるか(感じるか)で判別します。

まず、主穴を決めてツボを探り、ポイントを決めたら鍉鍼の金または銅を当てます。すると臍周囲の主穴反応点が緩みます(消えるとは限らない)。従穴の反応点が左右どちらかに残るはずなので同様に左右を判定します。従穴に銀・亜鉛・アルミの鍉鍼を当てて数秒。反応が一時的もしくは当分の間、緩むか消えれば決定です。配穴が決まればあとは宮脇式同様に施灸や粒置などを行います。当院ではイオンパンピングを行います。

ちょっとした例外で面白いのが、先の判定法で右主穴→左主穴という判定がでることがあります。これはこの手法の欠点というわけではなさそうです。陰陽交差(透し鍼や打ち抜き灸など)ではないかと思っています。あるいは左右への分散かも?面白いことに、そのままの配穴を採用してなにかしらの症状が軽減していることが多いです。また、主穴だけで従穴の反応まで消えることもあります。最初から従穴の反応が無いこともある。この場合は主穴だけの配穴でも十分のようです。

主穴に鍉鍼をおいたら従穴の反応が出るという場合もあります。

おおよそ分かっている事の要点は以上であす。あまり症状と照らし合わせが必要でないので簡便に応用していただきたい。異論は認める。まだまだ治験が不十分と考えるからです。あとイオンパンピングですが、経別治療とではプラスマイナスでのつなぎ方が逆であることが多いです。これもいろいろ考えさせられて面白いですね。

機会があればこの異説奇経治療に至った、独断と偏見もあわせて別に書こうと思います。なお、この異説奇経治療は完全オリジナルです。が、ひょっとしたら誰かの役に立つかと思って公開します。他にもこの治療のオプションはありますが、それは追々ということで。

膝痛 4

膝痛 3から続きです
 ・加重によるもの
 ・使いすぎによるもの
 ・外傷によるもの
 以上3つのケースでそれぞれに

・関節の骨・軟骨
・関節胞
・腱、靱帯、半月板
・筋肉の状態
・動作パターン
・筋力の出力調整
・関節の遊び (他関節との関わり)
 以上(おおまかに)7つの故障を想定して説明しています。3から続きの最後の項目からです。

関節の遊び:自分ではなかなか認識しづらいですが、他人に足を持ち上げてもらってさらに揺らしてもらうと、いろんな方向にすこしだけグラグラと動きます。これが遊びです。また膝の皿も正常であればグニグニ動きます。関節に痛みのある人は、この遊びが全く無いか、激痛を訴えて遊びを確認できません。この遊びは、関節面が「多少ズレても滑る事が可能な余裕」の様なものです。この遊びは関節周囲の筋肉の緊張状態に大きく影響を受けます。遊びが少なければ痛みが発生しやすく、痛みが出れば緊張が強くなり、と悪循環の定番のわりに、症状の説明で抜け落ちやすいところです。

他関節との関わり:これも「遊び」の範疇で説明します。股関節や足関節(足首)に問題があっても膝に影響してきます。どちらも多方向に大きく動く自由度が大きな関節ですが、膝はほぼ屈伸のみのために、股関節や足関節の故障をかばう余地がほとんどないからです。いつもよりほんの少しの捻った動き、捻ってしまう筋緊張が膝の遊びを奪ってしまいます(膝に捻りを加えて屈曲させてしまう)。また、痛みなどもあれば捻らなくとも筋肉の緊張がストレートに膝関節への加圧になります。

とりあえずざっくり、前述部位の硬化や炎症、周囲筋肉の筋力バランスや動作感覚の消失(筋肉の動作パターンと出力調整の誤作動)がおこり、これに伴って腫れ、圧迫、血流の悪化が起こります。次いで各組織の強靱さが失われ、炎症の周辺拡大がおこります。一時的に症状が収まっても弱体化状態が改善されない限り、日常生活での負荷をうまく回避できないといずれ必ず再発します。このサイクルが繰り返されると症状自体は軽くても、やがて半月板や靱帯の損傷、関節の変形、骨折、慢性的な神経炎などに繋がります。
 なお、治療が必要か否かは下肢をぶらぶら揺らして前述した「遊び」があるかどうかが目安になります。症状が軽くても、関節に遊びが無いとなれば重症予備軍と考えて良いでしょう。ただし、自分で確認できるかというと難しいので専門家に相談するべきです。

膝痛 3

膝痛 2から続きです
 ・加重によるもの
 ・使いすぎによるもの
 ・外傷によるもの
 以上3つのケースでそれぞれに

・関節の骨・軟骨
・関節胞
・腱、靱帯、半月板
・筋肉の状態
・動作パターン
・筋力の出力調整
・関節の遊び (他関節との関わり)
 以上(おおまかに)7つの故障を想定して説明しています。2から続きの3パターンに関しての問題です。

筋肉の状態:関節そのものはいわば蝶番で、動かす動力である筋肉が周辺にたくさんあります。外側の筋肉が疲労で固まったり力を失うと、他の筋肉がかばって働きます。厳密にはそれぞれの筋肉は独自の働きがあり、そのため「かばう」動作が蝶番が本来想定しない角度の屈伸をさせることになります。

動作のパターン:次の出力調整とも関係しますが、同じ屈伸でもまっすぐか、内股か外股かでも、階段の昇りか降りかでも力の入れ方というか力の入れる順番も少しずつ違いがあります。痛みやヒキツリが長く続くとこの「順番」が狂ってきます。脳が間違った学習をすると思って頂いてもかまいません。そうなると先の「筋肉の状態」で述べた「かばう動作」を覚えてしまい、元々の痛みの原因が治っていても無理な動作を続けて、これが原因で膝痛が治らない結果になります。

筋力の出力調整:色々と名前の付いている筋肉一つをとっても、細かくは一本々々の繊維筋細胞ごとに力を出していて、関節の曲げ具合によって使う筋肉や、力の加減をしています。関節を動かすというのは単純な曲げ伸ばしだけはなく、曲げている角度の維持が大変重要になります。言い方を変えると抗重力、つまり体を支えるために重力に逆らう方向に力を入れるということです。やさしく言いますと、いろんな形で体を曲げてしゃがんだり、中腰になっても倒れないように踏ん張る力、ということです。こういった動きを実現する為に、本来自然と細かく力を加減しているのですが、痛みの為につい力んだりしているうちに、この出力調整に狂いが生じてきます。先の「運動パターン」と同じで脳が間違った記憶をしてしまうのです。

残りの1項目は続きの「膝痛 4」で

膝痛 2

膝の故障についてさらに詳しく云いますと…
 ・加重によるもの
 ・使いすぎによるもの
 ・外傷によるもの
 以上3つのケースでそれぞれに

・関節の骨・軟骨
・関節胞
・腱、靱帯、半月板
・筋肉の状態
・動作パターン
・筋力の出力調整
・関節の遊び(他関節との関わり) 
 以上(おおまかに)7つの故障を想定すると理解しやすいかとおもいます。

加齢によるもの、は含んでいませんが、そのケースは多くが「運動意欲の低下」がのお話になってくると考えますので、「治したい」「あきらめたくない」のであれば「加齢によるものだからしょうがない」は無視していいでしょう。各ケースについては、原因や切っ掛けそのものなので解説は割愛します。代わりに7つの故障について専門的になりすぎない程度に詳しく解説します。

軟骨:関節のところ、骨と骨の接触面にあたる部分のツルッとして骨本体より柔らかいイメージのところです。加齢や加重の影響で再生力が弱くなったり、負担が大きすぎると骨化といって硬くなり滑らなくなります。その結果は変形や摩擦が起きて炎症の原因となります。加齢でとは書きましたが、昔とは違って健康補助食品やサプリメントなどが充実してきて、価格も下がってきています。万人に効果が望めるものではないですが、確かに効果のあった方もおられます。軟骨が減少していても変形が始まる前ならワンチャンス期待できるかもしれません。

関節胞:いわゆる水が溜まるところ。関節がなめらかに滑るのに大事な潤滑油的な成分が貯留しています。ほかに滑液胞というものもありますが、そちらは次で解説している軟部組織同士のためのクッションです。
炎症をおこすと水分が増え、潤滑液としては薄くなり滑りが悪くなり軟骨の接触面が擦れることになる。また水が増えすぎると、膨らみすぎた風船状になり、表面に多い神経が引き延ばされて酷い痛みになります。
 炎症を治せば関節に水が溜まらなくすることはできます。逆に、たとえば外傷性(転倒による強打や捻挫など)に胞内に出血していると炎症が非常に治り難く、水を(血を)抜くのが治療の最短距離になります。血はけっこう”ばっちぃ”ので抜かないと極端に治りが悪いです。むしろ炎症が悪化します。かつ、胞内のこういった出血に対して体の自浄力は弱い様で、鍼灸治療で対処となると時間が掛かります。

靱帯、腱、半月板:骨同士を繋げる靱帯や筋肉の一部である腱、上下の骨に挟まれてクッションの役割をしている半月板というものがあります。骨のように硬い組織ではないので少々の負担ならばともかくビリッと裂けてしまうことがあります。骨ならばほぼ元通りを期待できますが、こういう組織は単なる自然治癒(放置)にまかせると脆弱化しやすいのが特徴です。よくスポーツ選手が関節の手術をするのは裂けたところを「綺麗にキッチリ歪み無く」繋ぐためです。歩行程度ならば問題なくとも体重の何倍もの負担が発生する運動をするには大きな損傷を自然治癒に任せるのはリスクが大きすぎるからですね。

続きは「膝痛 3」で

膝痛 1

 

 とにかく動かし方によって痛みがでるという以外、どのような状態のなのか自覚しづらいのが特徴。とはいえ、ちょっとの痛みと思って長く放置すると難治性の症状に変わっていることが多々あるので、わからないなりに知識はあると吉です。

ひとまず超簡単に…
 ほとんど場合で「重症の患者」は病院に行ってしまうので、鍼灸院ではあまり遭遇することは稀です。一方で治療室でよくみかける疾患では次のようなものがあります。
 a.外傷性のもの:膝内障
 b.急性炎症:痛風・リウマチ
 c.慢性痛:変形性膝関節症
 d.その他

a.膝内障とは関節各部の損傷のことで、損傷箇所が未確定時点で使われる総称です。スポーツのアクシデントや転倒、事故等によっておこるもので比較的痛みとの因果関係がはっきりしていることが多いものです。痛みと可動域制限が主たる症状になります。急性炎症からはじまるケースと、受傷当時はそれほどひどい痛みがなくて気がつかず、のちに悪化させてしまうケースがあります。


b.原疾患があるもの、という区分けです。特に見かけるのは痛風やリウマチです。痛風の初発は足の母指におきる事が多いので、膝に発症した方はたいがい初めてではないようです。次のリウマチは本当に多種多様です。関節が腫れて変形するのが一般的なイメージだと思います。多くは足指の関節の炎症・激痛からはじまり、徐々に中枢にむかって進行していくようです。


c.慢性症では変形性関節症が圧倒的に多いようです。特に持病が無くとも肥満や運動不足、加齢的要因で関節軟骨が硬くなり、炎症を起こし、すり減るなどの変化を起こします。特に骨の変形まで進めば完全に可逆性(自然治癒の可能性)を失い慢性症となります。


d.最後に変形も炎症も外傷の心当たりもないのに疼痛があるというものです。神経痛や心因性の~などと診断される場合もあるようです。

以上が鍼灸院でよく治療させていただくパターンです。おおむね共通するのは、若い方のaやdのパターン以外では時間が掛かる、またはよくなった後も定期的な治療が望ましいことが多いということです。上記の説明だけでもおわかりかと思いますが、生活習慣の改善なり運動指導などが必要になることが多いからですね。

 続き「膝痛 2」では視点を変えた解説をしていきます。

なぜ今東洋医学推しなのか 3

 東洋医学はとにかく対話を大事にします。雑談もしかり。問診だけではなく、顔色を見るし、全体を観るし、触診して、声(の高低や息づかい)を聞いて、施術は治療と同時に患者さんのからだへの問いかけです。言葉と接触を介したコミュニケーションはメンタルケアの面でも重要な要素と考えています。からだ以外にもやさしい。推しの理由その3です。

おまけ
1でも述べましたが、昨今の医師はPC画面とにらめっこしている方も多く、ただでさえ短い診察時間の価値がだだ下がりしています。医師にとって診察時間をいかに短くするかは最も評価すべき技術のひとつであることは確かですが、心理的要素として顔を合わせるぐらいは必要です(もちろん例外はありますが)。この一点だけは苦情を申し上げたい。まぁ、電子カルテ化が当たり前の現代で、年を食うとPC入力は集中しないとしんどいのは理解しますし、実感してますが。えぇ、老眼とかホントいやですねぇ……乱視もあるからもうホントに(泣)。最近の総合病院などの大きなところでは、PC入力は助手が行っているようです。一人親方には羨ましい環境です(笑)。

なぜいま東洋医学推しなのか 2

 東洋医学はからだの治癒力を増大させることを主眼とし、体全体のバランスを診ます。鍼灸治療では刺激を最小限にして、体力温存を原則とします。漢方薬でも、微量では薬効の小さい生薬を、複数組み合わせることで高い効果を生みだしています。これらはウィルスや細菌を直接たたくようなものではなく、発汗させたり、排便を促したりといった、生理作用の促進という無理のない形でからだに作用します。そうしてからだの治癒力を増大させることを主眼としています。からだにやさしい。これが推しの理由その2です。

おまけ
西洋医学は病原とされる細菌やウィルスや患部の状態ばかりに注目してきた過去があり、機械的な検査や治療法がどんどん開発されてきました。そうして1でも述べた患者さんの顔を見ない医師を生み出し、不安を覚える方が増えたのです。また、こうした医学の歴史上には、細菌と抗生剤の進化合戦(いたちごっこ)がおきたり、A内科とB内科とC外科で処方されたお薬が相互作用を起こした結果、別の病気になった…なども起きました。昨今の”「副反応」アレルギー”の様な社会性もこの名残でしょう。現在は「おくすり手帳」の活用で相互作用による薬害が発見しやすくなってきています

なぜいま東洋医学推しなのか 1

 これは20年以上前からいわれていることですが、近代西洋医学の分析的な手法が行きすぎて、病気と体をトータルで診ることが出来なくなりました。この点は間違いなく医療業界で認識されているはずです。残念ながら、科学的技術が医療分野だけに限っても日々すさまじい速度で進歩し続ける為か、引きずられるかのように専門化が進み、「専門の専門家」ばかりが増えているように思います。患者さんと雑談していて「あちゃー」と思うのは、受診した先のお医者がPC画面ばかり見て患者さんの顔を見ない、検査データだけ診て徒手検査などしない、この先生は私の何を見てるのか、と聞かされた時。昔、子供の頃にお世話になった先生は顔を見て即「こりゃいかん!」と言って、紹介状渡されて大学(付属)病院に行かされました。で、即入院。翌日担当医に「二日遅れたら命が危なかったかも」といわれたのを覚えています。そんな風に、顔を見てスパンッと判断できるようにならねばと常々思います。鍼灸師的に。それはさておき、顔を合わせて体に触る。たったこれだけのことなのに、ベテランがすると患者さんはホッと安心できる。これが医術の基本で奥義だと思います。これが東洋医学推しの理由その1。東洋医学の聖典のひとつ難経(なんぎょう)では、この基本を徹底的に磨き続けた先に至高があるとしています。(かなり曲解ですが、根拠は下記参照のこと)

おまけ
 難経第六十一難で表記としては「望而知之.謂之神.(望んでこれを知る者を神という)」とあります。あくまで診察法を説明するところの一節でしかありませんが、見るだけで診断する(望診)のが最もすごい!(難しい)としています。なお、他の診察法と対比しながら「神・聖・工・巧」の4つに区分しています。あちらこちらでいろんな翻訳をみますが、個人的には「神様・聖人・工人・老巧」とみています。前2つが才能ありきのすごい人で、次が普通の職人→老練な達人という感じです。僕自身、ぱっと見でなんでもかんでもわかるまでには程遠いですが、定期的に来られる方なら顔見て歩き方見て、お互いに挨拶交わした段階で「なんかおかしいぞ?」「腰ひねったか?」「あ~この表情はパニック症状でたかぁ」などと時々なります。これを突き詰めることができれば…とは思いますが、なかなかですねぇ。