私が行っている奇経治療の紹介です。内容は臨床家向きです。一般の方には謎言語になると思いますのでご注意ください。
従来の八脉と宮脇和登氏の提唱する新四脉を含む十二脉を扱う点においては同じつもりです。大きな相違点は、簡易診断に宮脇氏提唱の腹診とは違って「臍の周囲と腹直筋外縁」に反応を求める点です。この方法による特徴は
1.「左右どちらに配穴するか」が反応と一致することが多く、迷いにくい。
2.奇経治療は主穴と従穴の組み合わせが原則であるが、この反応点を主眼に配穴する場合、主穴のみで著効が得られる場合が判別できる。単純に主穴に鍼を置くだけで反応点の硬結が綺麗に消えるからです。
3.脉診や、通常の腹診で判断に自信がもてない場合にまずこの方法で奇経治療を行うと、脈も腹もがらっと表情を変えて分かりやすくなることが少なくない。小児針ではこれだけで治療が可能です。というか幼児に限らず主訴がわからない(愁訴が多すぎる)相手だと非常に助かる。
さて、肝腎の反応点ですが、
A.臍の周囲八方向(上下、左右、斜め)におよそ指頭(腹)一つ分の幅が反応点です。2つ分が並んでいます。つまり2指頭分が反応範囲です。臍の際から取ります。おそらく骨度法です。じっくりとは検証してません。
B.硬結反応の取り方は、押圧は圧力0とわずかに押さえ込むこと、さらにポイントの表皮の虚実で4パターンあります。ややこしそうだがそれ程難しくはありません。判別の基準は「圧0で実」とします。臍の際が主穴、その次が従穴です。なお、臍が開いている人と、閉じている人などいるが、あくまで「際から」であす。隙間をあけて反応を取ると、まったく奇経とは別物になる様です。つまり二指の腹をそろえて反応を伺うのが大事です。
C.臍の上が任脉、下が督脉、左右が陰維脉、上の斜め方向が陽維脉、下の斜め方向が手の少陰脉です。少し押さえ込んだところに反応が出ていれば上が陽蹻脉、以下順に陰蹻脉、衝脉、帯脉、足の厥陰脉です。手足の陽明脉は腹直筋外縁で判断します。臍の高さを境に「表皮が実で」上が張っていれば手陽明脉で、下が張っていれば足陽明脉です。まず2パターンを記述しましたが残りの2パターンは簡単です。表皮が虚を呈していれば主穴従穴の反応点が逆としてください。手足の陽明脈は軽按が基本で重按で逆になり、虚実でも逆にります。
次に配穴で左右どちらを取るかの判別ですが、臍の左右どちらに反応が出ているかがそのまま示しています。正中線上だけは反応点を左右に動かし(皮膚をひっかける様にすべらせる)、どちらに強く硬結を捉えられるか(感じるか)で判別します。
まず、主穴を決めてツボを探り、ポイントを決めたら鍉鍼の金または銅を当てます。すると臍周囲の主穴反応点が緩みます(消えるとは限らない)。従穴の反応点が左右どちらかに残るはずなので同様に左右を判定します。従穴に銀・亜鉛・アルミの鍉鍼を当てて数秒。反応が一時的もしくは当分の間、緩むか消えれば決定です。配穴が決まればあとは宮脇式同様に施灸や粒置などを行います。当院ではイオンパンピングを行います。
ちょっとした例外で面白いのが、先の判定法で右主穴→左主穴という判定がでることがあります。これはこの手法の欠点というわけではなさそうです。どうやら陰陽交差(透し鍼や打ち抜き灸など)ではないかと思う。あるいは左右への分散かも?面白いことに、そのままの配穴を採用してなにかしらの症状が軽減していることが多いです。また、主穴だけで従穴の反応まで消えることもあります。最初から従穴の反応が無いこともある。この場合は主穴だけの配穴でも十分のようです。
おおよそ分かっている事の要点は以上であす。あまり症状と照らし合わせが必要でないので簡便に応用していただきたい。異論は認める。まだまだ治験が不十分と考えるからです。あとイオンパンピングですが、経別治療とではプラスマイナスでのつなぎ方が逆であることが多いです。これもいろいろ考えさせられて面白いですね。
機会があればこの異説奇経治療に至った、独断と偏見もあわせて別に書こうと思います。なお、この異説奇経治療は完全オリジナルです。が、ひょっとしたら誰かの役に立つかと思って公開します。他にもこの治療のオプションはありますが、それは追々ということで。