今回は「援鍼堂ではどう診るか」です。
a.炎症の有無 |
b.脊柱起立筋の状態 |
c.腸腰筋の状態 |
d.仙腸関節の状態 |
e.骨盤の歪みを確認 |
f.その他 |
g.痛い部位の確認 |
ざっくりと項目に分けると以上になります。gを最後にしているのは先入観を捨てるためと思って下さい。他は順不同な感じです。
例えば、ヘルニアを起こしている部位で急性腰痛を再発、炎症を伴ったケース。右側腰椎際の炎症部位=発痛部位で脊柱起立筋は過緊張ながら見かけ上は陥凹、反対側は膨隆しているとします。すると初期治療としては炎症部位をアイシング、反対側の緊張緩和、炎症部位への施灸を考えます。炎症を起こしている部位は基本としてアイシングにより「延焼を止める」のが基本です。周囲の細胞まで破壊する炎症という状態は発熱を伴い、熱が強くなると破壊力も強くなります。血管も壊されて出血すると雑菌感染まで併発することもあります(血液って意外とばっちぃものです)。なのでまず、この炎症を冷やして押さえ込みます。
で、その次に背骨の反対側(左)が右をかばって上半身を支えている状態ですから、回復するまで頑張ってもらわなくてはいけません。なので一度力を抜いてもらいます。そのあと、改めて炎症を起こした部位に血流量増大と白血球の集中を目的に施灸をします。
理屈は簡単。数回読み直してもらえればイメージできると思います。一方で技術は複雑怪奇です。アイシングはスポーツでよく行うケアと同じですが、そのあとの緊張緩和のところからは専門性が跳ね上がります。順番は前後しますが、痛みや炎症の度合い次第で骨盤の歪みを先に整復します。炎症がはっきり確認できる場合はたいてい無理なので次です。下腹部とその外側、腸骨の内縁の触診にて腸腰筋の状態を伺います。これと脊柱起立筋の状態とあわせてどの程度の緊張緩和をするのかを決定します。場合によっては、やや過剰に緩和させて代わりにテーピングで補強します。急性腰痛、いわゆるぎっくり腰は絶対安静が基本ですが、そうも言ってられないと言う場合もあるので、テーピングのうえにコルセット推奨の場合もあります。が、絶対安静が原則です。
さらに専門的かつ鍼灸的には少腹部・下腹部・仙腸関節周囲の痰状硬結(グミのような感じでごろごろしたもの 大きさはまちまち)の除去や虚実のバランス調整。炎症部位に関連する火穴の圧痛除去などなど。処置は色々あって一つこなせばその分何かしら楽になっていきます。
おまけ
しかしながらギックリ腰とかになって鍼灸治療を選択する人の多くは少し楽になればすぐに出勤されます。そして動けなくなって電話が掛かってきます。最初の楽になったのは「血流が改善されて溜まっていた発痛物質が押し流された」状態です。痛みを緩和させただけで治っていません。
だから「絶対安静が鉄板」です。「ぎっくりは絶対安静が基本で原則で鉄板」です。