膝痛 4

膝痛 3から続きです
 ・加重によるもの
 ・使いすぎによるもの
 ・外傷によるもの
 以上3つのケースでそれぞれに

・関節の骨・軟骨
・関節胞
・腱、靱帯、半月板
・筋肉の状態
・動作パターン
・筋力の出力調整
・関節の遊び (他関節との関わり)
 以上(おおまかに)7つの故障を想定して説明しています。3から続きの最後の項目からです。

関節の遊び:自分ではなかなか認識しづらいですが、他人に足を持ち上げてもらってさらに揺らしてもらうと、いろんな方向にすこしだけグラグラと動きます。これが遊びです。また膝の皿も正常であればグニグニ動きます。関節に痛みのある人は、この遊びが全く無いか、激痛を訴えて遊びを確認できません。この遊びは、関節面が「多少ズレても滑る事が可能な余裕」の様なものです。この遊びは関節周囲の筋肉の緊張状態に大きく影響を受けます。遊びが少なければ痛みが発生しやすく、痛みが出れば緊張が強くなり、と悪循環の定番のわりに、症状の説明で抜け落ちやすいところです。

他関節との関わり:これも「遊び」の範疇で説明します。股関節や足関節(足首)に問題があっても膝に影響してきます。どちらも多方向に大きく動く自由度が大きな関節ですが、膝はほぼ屈伸のみのために、股関節や足関節の故障をかばう余地がほとんどないからです。いつもよりほんの少しの捻った動き、捻ってしまう筋緊張が膝の遊びを奪ってしまいます(膝に捻りを加えて屈曲させてしまう)。また、痛みなどもあれば捻らなくとも筋肉の緊張がストレートに膝関節への加圧になります。

とりあえずざっくり、前述部位の硬化や炎症、周囲筋肉の筋力バランスや動作感覚の消失(筋肉の動作パターンと出力調整の誤作動)がおこり、これに伴って腫れ、圧迫、血流の悪化が起こります。次いで各組織の強靱さが失われ、炎症の周辺拡大がおこります。一時的に症状が収まっても弱体化状態が改善されない限り、日常生活での負荷をうまく回避できないといずれ必ず再発します。このサイクルが繰り返されると症状自体は軽くても、やがて半月板や靱帯の損傷、関節の変形、骨折、慢性的な神経炎などに繋がります。
 なお、治療が必要か否かは下肢をぶらぶら揺らして前述した「遊び」があるかどうかが目安になります。症状が軽くても、関節に遊びが無いとなれば重症予備軍と考えて良いでしょう。ただし、自分で確認できるかというと難しいので専門家に相談するべきです。

膝痛 3

膝痛 2から続きです
 ・加重によるもの
 ・使いすぎによるもの
 ・外傷によるもの
 以上3つのケースでそれぞれに

・関節の骨・軟骨
・関節胞
・腱、靱帯、半月板
・筋肉の状態
・動作パターン
・筋力の出力調整
・関節の遊び (他関節との関わり)
 以上(おおまかに)7つの故障を想定して説明しています。2から続きの3パターンに関しての問題です。

筋肉の状態:関節そのものはいわば蝶番で、動かす動力である筋肉が周辺にたくさんあります。外側の筋肉が疲労で固まったり力を失うと、他の筋肉がかばって働きます。厳密にはそれぞれの筋肉は独自の働きがあり、そのため「かばう」動作が蝶番が本来想定しない角度の屈伸をさせることになります。

動作のパターン:次の出力調整とも関係しますが、同じ屈伸でもまっすぐか、内股か外股かでも、階段の昇りか降りかでも力の入れ方というか力の入れる順番も少しずつ違いがあります。痛みやヒキツリが長く続くとこの「順番」が狂ってきます。脳が間違った学習をすると思って頂いてもかまいません。そうなると先の「筋肉の状態」で述べた「かばう動作」を覚えてしまい、元々の痛みの原因が治っていても無理な動作を続けて、これが原因で膝痛が治らない結果になります。

筋力の出力調整:色々と名前の付いている筋肉一つをとっても、細かくは一本々々の繊維筋細胞ごとに力を出していて、関節の曲げ具合によって使う筋肉や、力の加減をしています。関節を動かすというのは単純な曲げ伸ばしだけはなく、曲げている角度の維持が大変重要になります。言い方を変えると抗重力、つまり体を支えるために重力に逆らう方向に力を入れるということです。やさしく言いますと、いろんな形で体を曲げてしゃがんだり、中腰になっても倒れないように踏ん張る力、ということです。こういった動きを実現する為に、本来自然と細かく力を加減しているのですが、痛みの為につい力んだりしているうちに、この出力調整に狂いが生じてきます。先の「運動パターン」と同じで脳が間違った記憶をしてしまうのです。

残りの1項目は続きの「膝痛 4」で

膝痛 2

膝の故障についてさらに詳しく云いますと…
 ・加重によるもの
 ・使いすぎによるもの
 ・外傷によるもの
 以上3つのケースでそれぞれに

・関節の骨・軟骨
・関節胞
・腱、靱帯、半月板
・筋肉の状態
・動作パターン
・筋力の出力調整
・関節の遊び(他関節との関わり) 
 以上(おおまかに)7つの故障を想定すると理解しやすいかとおもいます。

加齢によるもの、は含んでいませんが、そのケースは多くが「運動意欲の低下」がのお話になってくると考えますので、「治したい」「あきらめたくない」のであれば「加齢によるものだからしょうがない」は無視していいでしょう。各ケースについては、原因や切っ掛けそのものなので解説は割愛します。代わりに7つの故障について専門的になりすぎない程度に詳しく解説します。

軟骨:関節のところ、骨と骨の接触面にあたる部分のツルッとして骨本体より柔らかいイメージのところです。加齢や加重の影響で再生力が弱くなったり、負担が大きすぎると骨化といって硬くなり滑らなくなります。その結果は変形や摩擦が起きて炎症の原因となります。加齢でとは書きましたが、昔とは違って健康補助食品やサプリメントなどが充実してきて、価格も下がってきています。万人に効果が望めるものではないですが、確かに効果のあった方もおられます。軟骨が減少していても変形が始まる前ならワンチャンス期待できるかもしれません。

関節胞:いわゆる水が溜まるところ。関節がなめらかに滑るのに大事な潤滑油的な成分が貯留しています。ほかに滑液胞というものもありますが、そちらは次で解説している軟部組織同士のためのクッションです。
炎症をおこすと水分が増え、潤滑液としては薄くなり滑りが悪くなり軟骨の接触面が擦れることになる。また水が増えすぎると、膨らみすぎた風船状になり、表面に多い神経が引き延ばされて酷い痛みになります。
 炎症を治せば関節に水が溜まらなくすることはできます。逆に、たとえば外傷性(転倒による強打や捻挫など)に胞内に出血していると炎症が非常に治り難く、水を(血を)抜くのが治療の最短距離になります。血はけっこう”ばっちぃ”ので抜かないと極端に治りが悪いです。むしろ炎症が悪化します。かつ、胞内のこういった出血に対して体の自浄力は弱い様で、鍼灸治療で対処となると時間が掛かります。

靱帯、腱、半月板:骨同士を繋げる靱帯や筋肉の一部である腱、上下の骨に挟まれてクッションの役割をしている半月板というものがあります。骨のように硬い組織ではないので少々の負担ならばともかくビリッと裂けてしまうことがあります。骨ならばほぼ元通りを期待できますが、こういう組織は単なる自然治癒(放置)にまかせると脆弱化しやすいのが特徴です。よくスポーツ選手が関節の手術をするのは裂けたところを「綺麗にキッチリ歪み無く」繋ぐためです。歩行程度ならば問題なくとも体重の何倍もの負担が発生する運動をするには大きな損傷を自然治癒に任せるのはリスクが大きすぎるからですね。

続きは「膝痛 3」で

膝痛 1

 

 とにかく動かし方によって痛みがでるという以外、どのような状態のなのか自覚しづらいのが特徴。とはいえ、ちょっとの痛みと思って長く放置すると難治性の症状に変わっていることが多々あるので、わからないなりに知識はあると吉です。

ひとまず超簡単に…
 ほとんど場合で「重症の患者」は病院に行ってしまうので、鍼灸院ではあまり遭遇することは稀です。一方で治療室でよくみかける疾患では次のようなものがあります。
 a.外傷性のもの:膝内障
 b.急性炎症:痛風・リウマチ
 c.慢性痛:変形性膝関節症
 d.その他

a.膝内障とは関節各部の損傷のことで、損傷箇所が未確定時点で使われる総称です。スポーツのアクシデントや転倒、事故等によっておこるもので比較的痛みとの因果関係がはっきりしていることが多いものです。痛みと可動域制限が主たる症状になります。急性炎症からはじまるケースと、受傷当時はそれほどひどい痛みがなくて気がつかず、のちに悪化させてしまうケースがあります。
b.原疾患があるもの、という区分けです。特に見かけるのは痛風やリウマチです。痛風の初発は足の母指におきる事が多いので、膝に発症した方はたいがい初めてではないようです。次のリウマチは本当に多種多様です。関節が腫れて変形するのが一般的なイメージだと思います。多くは足指の関節の炎症・激痛からはじまり、徐々に中枢にむかって進行していくようです。
c.慢性症では変形性関節症が圧倒的に多いようです。特に持病が無くとも肥満や運動不足、加齢的要因で関節軟骨が硬くなり、炎症を起こし、すり減るなどの変化を起こします。特に骨の変形まで進めば完全に可逆性(自然治癒の可能性)を失い慢性症となります。
d.最後に変形も炎症も外傷の心当たりもないのに疼痛があるというものです。神経痛や心因性の~などと診断される場合もあるようです。

以上が鍼灸院でよく治療させていただくパターンです。おおむね共通するのは、若い方のaやdのパターン以外では時間が掛かる、またはよくなった後も定期的な治療が望ましいことが多いということです。上記の説明だけでもおわかりかと思いますが、生活習慣の改善なり運動指導などが必要になることが多いからですね。

 続き「膝痛 2」では視点を変えた解説をしていきます。